とうとう、あのハリウッドの問題児(児てかオヤジか)で天才監督のメルギブことメル・ギブソンが十年ぶりに新作を出しました!!
しかも、ジャンルは戦争映画!!
名前はハクソー・リッジ!!!
大残酷沖縄決戦を描きます!!!
スティーブン・スピルバーグ、デイヴィッド・エアー、と近年も素晴らしい戦争映画をつくる人はたくさんいるけれど、メル・ギブソンも戦争映画はとてつもなく素晴らしいものをつくります。
メル・ギブソンがこれまで監督した映画は、パトリオット、パッション、アポカリプトとありますが、そのどれもが魂を震わされました。
ハクソー・リッジも、やっぱり、上映中に泣いてしまいました。
すごく良い映画です。
沖縄決戦、前田高地の戦いの壮絶さだけじゃなく、その戦場を、手榴弾どころかピストル一丁さえもたずに駆けずり回ったデズモンド・ドスという一人の男の信念の気高さに魂が震えます!!
ハクソー・リッジのアメリカでの実績
さすが、メル・ギブソン!!
恋人へDVをしたり、酒乱で汚い言葉で罵ったり、とプライベートギブソンについては問題があっても、映画の腕は天才的。
アポカリプト以来、十年ぶりとなる復帰作でも、監督としてのブランクを感じさせることないスコアを弾き出しています。
ハクソー・リッジの受賞した賞
・第89回アカデミー賞2部門(編集賞、録音賞)受賞
・作品賞、監督賞(メル・ギブソン)、主演男優賞(アンドリュー・ガーフィールド)はノミネート
・ゴールデン・グローブ賞主要3部門(作品賞(ドラマ部門)、監督賞、主演男優賞(ドラマ部門))ノミネート
と、ハクソー・リッジはアカデミー賞編集賞と録音賞を受賞しているだけでなく、ほかの賞にもノミネートしています。
アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞は出来レース的な意味合いがあり、仮に作品賞や主演男優賞を取れなかったとしても、その賞にノミネートされたということが、その作品に強い魅力があることの証明となります。
ハクソー・リッジのあらすじと魅力
ハクソー・リッジは、アメリカの映画ですが、我々日本と無関係の映画ではありません。なぜなら、このハクソー・リッジは、第二次世界大戦の沖縄決戦を描いているからです。
ハクソー・リッジの戦闘の舞台は、前田高地。
前田高地は、沖縄県羨ましい浦添市にあり、のこぎりのようにそびえ立つ、高さ150メートルの断崖絶壁の崖を指しています。この断崖を、米国軍がこのように呼称したそうです。
ここで、沖縄を手に入れようとするアメリカと、自分たちの土地を守ろうとする日本人との激戦が繰り広げられます。
アメリカも日本も、それぞれの兵隊が武器を取って血みどろの戦いに挑むなか、たった一人だけ、ライフルや手榴弾はおろか、護身用のピストルさえも持たずに、この戦場で活躍した男がいます。
それが、デズモンド・ドス。実在の人物です。
デズモンド・ドスは、このハクソー・リッジを駆け回り、負傷した兵隊を75人も救いました!
しかも、彼は味方のアメリカ兵だけでなく、重症の日本の兵隊までも救助したのです。
ハクソー・リッジは、そんなデズモンド・ドスの英雄的な活躍と、その強烈な信念について描かれている映画です。
また、ハクソー・リッジの映画の構成は、故郷と軍隊の訓練・前田高地の激戦と三つのパートに別れているのですが、それぞれ、メル・ギブソンが好きな戦争映画を自分なりにマイナーチェンジさせている感覚があって、『これが俺の思う傑作戦争映画だ!』というこだわりがビシビシと感じられます。
ハクソー・リッジのキャスト
ハクソー・リッジのキャストを紹介していきます。
デズモンド・ドス役はアンドリュー・ガーフィールド
デズモンド・ドスを演じるのはアンドリュー・ガーフィールド。アンドリュー・ガーフィールドは、アメイジング・スパイダーマンで、スパイダーマンを演じた彼です。
また、最近も、マーティン・スコセッシ監督の沈黙-サイレンス-でも演技派俳優として注目されていましたね。
アンドリュー・ガーフィールドは、今もっとも注目されている俳優のひとりですが、ソーシャル・ネットワークでも、ジェシー・アイゼンバーグが演じるマーク・ザッカーバーグの友人を演じており、そのときのアンドリュー・ガーフィールドの演技をみて、デイヴィッド・フィンチャー監督は、この青年はいまに大スターになるに違いないだろうという旨を、ソーシャル・ネットワークのオーディオコメンタリーの中でも語っていました。
デイヴィッド・フィンチャー監督は、そのあとに控えたアメイジング・スパイダーマンで、アンドリュー・ガーフィールドが主演を控えていたことを知っていて、そのようにコメントしたのかもしれませんが、もし、知らなかったなら先見の目がありますよね。
ちなみに、そんなアンドリュー・ガーフィールドですが、日本の俳優で彼と似た容姿や立ち位置にいる俳優は瑛太さんだと思います。
似てませんかね(笑)
グローヴァー大尉はサム・ワーシントン
グローヴァー大尉役を演じるのはサム・ワーシントン。
サム・ワーシントンといえば、タイタンの戦いや続編のタイタンの逆襲、ドリフトやサボタージュが主な代表作。今回は、デズモンドをいびりつつも大人な雰囲気を持つ上官役を演じています。
スミティ・ライカ―役はルーク・ブレイシー
デズモンドに意地の悪い絡み方をするイケメンスミティを演じるのは、ルーク・ブレイシー。
戦闘時にデズモンドとスミティの間に生まれる絆みたいなものは、とても微笑ましかったです。
ルーク・ブレイシーは、ぼくは今回初見でしたが、この人は、スパイ・レジェンドやかけがえのない人など話題作にも出ているので知っている人は知っているかもしれませんね。
ドロシー・シュッテ役はテリーサ・パーマー
美しく可愛く、そして、このくらいのレベルなら、もしかしたら身近にいるかも、という親近感も一緒に感じさせてくれる美人が、テリーサ・パーマーです(笑)
ドロシーのデズモンドへの愛は、完全にデズモンドを信じていて、かれの信じる道を応援してくれている、といった感じがいいな、と思います。
こういう女性を妻にすると、男は自分の本来の実力以上の頑張りを見せるかもしれませんね。
ハクソー・リッジ以外のテリーサ・パーマーの主な代表作には、ウォーム・ボディーズや聖杯たちの騎士があります。
デズモンドの父親トム・ドス役はヒューゴ・ウィーヴィング
デズモンドの父親で、未だに第一次世界大戦のPTSDに苦しんでいる男を演じるのは、ヒューゴ・ウィーヴィングです。
ヒューゴ・ウィーヴィングは、変わってしまった父親でありながらも、家族を本当は愛している、という側面をもつという少し複雑な役回り。
ですが、ヒューゴ・ウィーヴィングは、それを過不足なく演じきっています。そんなかれは、物語の中盤でかなり重要な役割を果たします。ぼくは、そのシーンでも不覚にも感動しました。
ヒューゴ・ウィーヴィングといえば、マトリックスのエージェント・スミスがあまりにも有名ですが、他にもロード・オブ・ザ・リングやトランスフォーマー、クラウド アトラスなど、話題作にたくさん出ています。
ハクソー・リッジの宣伝でなぜ『沖縄』が使われないのか
さて。本当なら、早く話すべき疑問なのですが、ハクソー・リッジは、宣伝や予告で沖縄という言葉が使われませんでした。
これは、何故なのでしょうか。
配給会社のキノフィルムズの担当者によれば、沖縄の表記を前面に出さないのは、沖縄の人への配慮なのだそうです。舞台がおきなわであることに焦点をあてると、観たときに複雑な想いを抱く人もいるからだそうです。
実際、観た人のなかには「沖縄の一般住民の被害が描かれていない」、「アメリカ美談だろ」みたいな声もあるようですね。
遺族や被害者が傷つく側面もあるかも、という配慮からキノフィルムズは、沖縄という言葉を控えたのだろうと思うのですが、ぼくは、見たくない人は見なければいいだけの話なのでは、と思うので、そこまで気にする必要があるのかな?という疑問を感じました。
ただ、沖縄の戦争の被災者や遺族の方は、また、違う感想を抱くのかもしれないのでなんとも言えませんが。
ちなみに、沖縄県浦添市では、ハクソー・リッジの公開に合わせ、市のWebサイト上で、前田高地の様子や戦争当時の文献、歴史を紹介する詳しいページを公開しています。
また、映画では取り上げられない部分に目を向けてもらうため、浦添市民の大きな犠牲を示すデータも公開しました。なんと、この戦いに巻き込まれ、当時の浦添村の住民の44.6%が死亡しているのです。
これを聞くと、ここで亡くなってしまった人のことを映画に描かないのは、日本人としては確かに複雑な気持ちになるかも。
でも、重要なのは、このハクソー・リッジを鑑賞して、今まで沖縄決戦や前田高地での戦いを知らなかった人も、そのことに興味を持ち、よく考えるようになったのなら、それが一番良いことなのではないか、と思います。
ハクソー・リッジは今までのメル・ギブソン監督作品の集大成
ハクソー・リッジは、これまでのメル・ギブソン監督の集大成とでも言える作品です。
メル・ギブソン監督は恋人へのDVやアル中や暴言などが原因でハリウッドから干されていた時期もありました。
そこからの復帰作となったハクソー・リッジは、絶対に当たる映画にしなくてはいけない!!そんなメル・ギブソン監督の決死の想いを体現するがごとく、この映画は今までのの作品の良いエッセンスが抽出され、濃縮された作品となっています。
ブレイブ・ハート
大迫力の戦争シーンは、確実にブレイブ・ハートを更に進化させています。
ブレイブ・ハートの主人公といい、信念を持ってどんな苦難にもくじけない男の生きざまというのは、格好いいですね!
パッション
メル・ギブソン監督の行き過ぎた信仰心を映画化した映像が見れます。
本作とデズモンド・ドスの信念は、切っても切り離せない関係にあります。
主人公をとことん追い詰めねば気がすまないメル・ギブソン監督のマゾっぷりもたまらない問題作です。
アポカリプト
エンターテイメントとしての力は、本作からさらに伸びている気がします。
メル・ギブソンがハクソー・リッジを撮る上で参考にしただろう作品
フルメタル・ジャケット(1987年)
ハクソー・リッジは、故郷でのパート、軍事教練パート、前田高地での激戦パートの3つがあり、フルメタル・ジャケットは、軍事教練のシーンを撮る上で参考にされている可能性が高いです。
スターシップ・トゥルーパーズ(1997年)
前田高地のグッチョグチャの戦いは、このスターシップ・トゥルーパーズのバグとの戦いをシリアスにやった感じかもしれませんね。
プライベート・ライアン(1998年)
スティーヴン・スピルバーグの撮った戦争映画の金字塔とでも呼ぶべき作品。激戦を描くのにこれを参考にしなかったら、何を参考にするのか、というぐらいに有名な映画です。
ハクソー・リッジのヘルメットに弾丸があたるシーンなんかは、間違いなく、この映画を参考にしているでしょう。
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