今回紹介するのは、Netflixのドキュメンタリー映画『フォックスキャッチャー事件の裏側』。
映画『フォックスキャッチャー』を見て、デュポン家の御曹司であるジョン・デュポンの狂気を、スティーヴ・カレルが迫真の演技で表現していたことにヤラれ、見ることにしました。
ドキュメンタリー映画『フォックスキャッチャー事件の裏側』のあらすじ
レスリング金メダリストはなぜ殺されたのか?
家庭用ビデオで撮影された未公開映像を交え、大富豪から殺人犯となったジョン・デュポンの転落の軌跡を追うNetflixより
このドキュメンタリー映画は、1996年1月26日、アメリカ屈指の大富豪デュポン家の御曹司であるジョン・デュポンが、自らスポンサーを勤めているレスリングチームの金メダリスト、デイヴ・シュルツを射殺したその真相に迫るものです。
映画『フォックスキャッチャー』でも描かれているこの事件を、事件の関係者の回想と、かれらが撮っていたホームビデオなどを通じて暴いています。
映画と事実の違い
映画『フォックスキャッチャー』と、事実の違いが、この『フォックスキャッチャー事件の裏側』では、如実に描かれています。
というのも、映画『フォックスキャッチャー』では、ジョン・デュポンとマーク・シュルツ、デイヴ・シュルツの友情の三角関係のもつれというか、崩壊が軸となって、ジョン・デュポンが凶行を引き起こしたように描かれていますが、これは事実ではありません。
『フォックスキャッチャー事件の裏側』では、マーク・シュルツは登場せず、しかも、凶行の舞台となったフォックス・キャッチャーファームにマーク・シュルツがいた時期と、デイヴ・シュルツがコーチを務めていた時期が異なっています。
映画『フォックスキャッチャー』では88年のソウル五輪を目指してトレーニングに励んでいるように見えますが、実際にデュポンがフォックスキャッチャーを設立したのはオウル五輪以降なわけです。
シュルツ兄弟が、このチームに加わるのもその後です。
なので、マーク・シュルツは、映画ではかなり重要な役割を担っていますが、実際は、ジョン・デュポンの引き起こした事件とは、関係がない存在だったことになります。
ジョン・デュポンとマーク・シュルツは肉体関係があった?
映画では、ジョン・デュポンとマーク・シュルツが肉体関係があったような描写がありますが、これもウソです。
マーク・シュルツは、ゲイではありませんし、本人もデュポンと一度も関係を持ったことがないと激怒しています。
映画を面白くするためとはいえ、このような実在の、しかもまだ生きている人物について、嘘を描くというのはまずくはないのでしょうか。
ただし、マーク・シュルツは、ジョン・デュポンについては、かれ自身がゲイで、育成選手と肉体関係を持っていたと証言しています。
ジョン・デュポンはどうしてデイヴ・シュルツを殺したのか
映画でもそうでしたが、こちらのドキュメンタリーでも、最初は、ジョン・デュポンは、レスリングチームの仲間たちと和気あいあいとやっているんですよね。
けれど、ドキュメンタリーでは、次第にジョン・デュポンが精神に異常をきたしていく過程が描かれています。
愛情に飢えている孤独な大富豪が、レスリングチームを金銭的に援助し、その見返りとして、ではないですが、人間関係を築くことが苦手なジョン・デュポンの助けになる、という関係があったのですが、いろいろな要因がからんで、かれは次第に正常な人間関係を維持していくことが難しくなります。
妄想癖があるジョン・デュポンの言葉を、スポンサーだからという理由で、無条件に肯定したり、ご機嫌をとろうしたりすることは、ジョン・デュポンの心にとって、良く働いたはずはないし、それがジョン・デュポンを混乱させたことはあると思います。
また、かれはある時期からコカインを常用するようになり、銃を携帯するようになり、さらに、レスリングチームのメンバーにも向けるようになります。
なぜ、ジョン・デュポンが人を殺すにいたってしまったのか。それは、周囲の人間たちが、ジョン・デュポンの行動が異常であるのを分かっていながら、資金援助をしてもらうためにかれから離れることができなかったところにあるのかもしれません。
いかがでしたか。映画『フォックスキャッチャー』は面白いですが、ご覧のとおり、実話の映画化っていうのは、意外と盲点があるんですよね。
実話の映画化は、実は、映画を盛り上げるために、脚色が入って事実とは異なることも多いんです。
なので、本当のことを知りたければ、そのことを描いた他の映画や、他の文献をあたってみることが大切になります。
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